017のネタ帳

ポケモン二次創作ネタとか。

茂る蹄の民俗学

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 自らの角に花を咲かせ葉を茂らせるメブキジカは走る樹木、茂る蹄などと呼ばれていた。
 ある地域の特産物となっているきのみや果物、あるいは花の品種などはメブキジカが角にあったものを継ぎ木して増やしたのだという伝説がある。
 同様の伝説は、メェークルゴーゴートにも見られ、こちらは草や低木が多い。

 カロス地方にはこんな伝説がある。
 ――高い山から黄金色に輝くメェークルが降りてきて、農夫に背中の穂を刈り取らせた。農夫が刈り取った黄金の穂、それは最初の小麦であった。
 そして、メェークルの進化系であるゴーゴートはカロス沿岸の島で伝説を残していた。ゴーゴートは意外にも泳ぎが得意であり、なみのりを覚えるので、昔は沿岸部に近い島とはゴーゴートに乗って行き来し、交易を行っていたのだ。そんな経緯からゴーゴートに乗った商人が訪れた島にはこんな話がある。
 ある時、ゴーゴートが島に上陸した折、岸辺の岩に角をひっかけ、折ってしまった。その角を砂浜に刺したところ、根付いて海の木になった。海の木はマングローブと呼ばれている――と。

 また、伝説のみならず史実を見渡してもいくらかの事例がある。
 ゴーゴートの中には背中に良いワインの材料となるブドウが生える者がいて、そのブドウから作られるワインは最高級品として知られ、愛好家の憧れの的である。その群れの所有権を巡って、カロス貴族が争った記録が残されており、カロス革命時には没収されたりしたようだ。
 イッシュ地方ではメブキジカの角に生えた葉をお茶にする文化があるという。

ヤドンとヤドラン、シェルダーの民俗学

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 昔、ある海辺の国で不漁が続いた。漁民達は飢え、死を覚悟したその時、水平線の向こうから謎の一団が現れた。それはヤドンの群れだった。ヤドンたちは尻尾を差し出すと、漁民たちに切り取らせ分け与えたので彼らは飢えから救われた。そんなわけで今も厚く信仰されている。
 こんな話もある。ある地方では不漁で人々が困っていた時、海からホエルオーほどもあるヤドンがやってきて、海岸にどでかいしっぽを置いていった。ヤドンのしっぽをさばいてみると中から魚やら米俵やら小判が出てきた。
 浜辺でヤドンがいじめられているところを男が助けてやった話もある。そのヤドンが不漁の時にヤドランとなって現れた。ヤドランが尻尾からシェルダーを外すと中からぴかぴか光るきんのたまやでかいきんのたま、おおきなしんじゅが転がり出た。これを売って男の家は難を逃れたという。
 このような民話の他にも、しっぽがシェルダーに噛まれて進化する、という現象は人々に様々なインスピレーションをもたらした。その一つが下記の行事である。
 ウインディを模した獅子舞は全国各地に見られるが、その派生神事として神主さんがシェルダーの貝、あるいはそのレプリカで幼子の身体を挟み、噛ませる神事がある。赤ん坊なら早く立って歩くように、就学前なら頭がよくなるように、丈夫になるように願いを込めて、おしりを、頭をシェルダーの貝で挟むのだ。
 この神事はヤドンがヤドランやヤドキングになることにちなんでいるのはもちろん、パルシェンのように丈夫になれとか、チャンスを貝で挟み、逃がさないように、という意味合いも込められている。
 ウインディの頁でも触れたが、「かみつく」とは「神憑く」と書ける。シェルダーがしっぽに噛み付けばヤドンが立ち上がり、頭にかみつけばものすごいひらめきを持ったヤドキングになる。すなわちヤドランとヤドキングへの進化は神憑くの実践と言えるのだ。獅子舞の獅子に頭を噛んでもらうのは、むしろヤドキングに倣ったのだという主張も存在する。

ベトベトンに意思宿る

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 死んだポケモンの事が忘れられないなら、そのポケモンが入っていたモンスターボールをヘドロの海に投げ入れると良い。魂ごとボールを取り込んだヘドロがベトベトンになって会いに来る、という。
 行う人は大変少ない。が、そうして今も彼女と一緒なのだと理科系の男が話してくれた事がある。
「元はなんのポケモンだったのか」と、よく人に聞かれるのだが「聞き忘れた」と答える事にしている。なんとなくそのほうがいい気がするからだ。
 また、類型の話として、学生達の間で一時期流行った赤いベトベトンという都市伝説がある。内容は以下のようなものだ。
 いじめを苦に自殺した××は、「必ず復讐してやる」という遺書を残し、下水道に身を投げてベトベトンに取り込まれた。ベトベトンは××の意思を吸収し、××の血で赤く染まり、復讐を始める……というものだ。ベトベトンは水道管の中を移動できる。だから街のどこへ逃げようとかならずお前の所に現れる。蛇口から異臭がしたら、もうすぐそこだ――といった話である。
 そしてこの「意思を取り込む」というエピソードは、古くからの民話にも見られるのである。
 「泥田坊」という妖怪がいる。名前の通り泥でできた田に現れる妖怪で、先祖代々の田んぼが荒れたり、他者に渡ったりすると現れ、「田を返せーっ!」などと叫ぶ。この泥田坊は田の土をメインに構成されたベトベトンである、という説があるのだ。

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泥田坊

 今も昔も、ベトベトンにはなんらかの魂や意思か宿ると考える人が多いという証左であろう。

ジュカインと櫻守の話

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 ジュカインの背中の実は植物を元気にする事はよく知られている。だから桜を育てて、美しく維持管理する櫻守(さくらもり)はよくジュカインを連れている。元気のない桜に実を与えて、花を沢山咲かせるためである。
 ある古典には櫻森のもとに樹齢五百年の桜の花を再び咲かせて欲しいとの依頼が舞い込む話がある。だが、実を与えようとするとジュカインが拒否する。
 その様子を見た櫻守は依頼主にこう告げた。
「この桜の望みは土に還ることです。今年ばかりは咲かせましょうが、後はそっとしておやりなさい」
 依頼主が了承するとジュカインはようやく実を渡してくれた。
 桜は盛大に花をつけ、花が散ると共に枯れたという。


 ジュカインの背中の実はひとつ埋めると畑一反(300坪)の作物が豊作になるといわれた。
 昔、ある男が山でジュカインに出会った。男がその背中の実を欲したところ、ジュカインから出された条件が男との交わりであったという。男の精を得たジュカインの背中になった実はやがて一列がキモリ、一列が人間の赤ん坊になったと言われている。
 そのうち一人の女の子は村で育てられた。ところがその子が大きくなった頃、飢饉が訪れる。村では寄合で娘を人柱にと決めてしまう。元々はジュカインの実なのだから、埋めれば作物がなるだろうというのだ。男は娘を連れて逃げたが、途中で捕まって、娘は畑の真ん中に埋められてしまった。お陰で作物が育って村は助かったという。
 ホウエンにはジュカインの実から生まれた子の話が多くて伝わっているが、残念ながらその話の多くはこのような形で大人になることなく土に還ったというものだ。また、育てた子を生贄にすれば普通のジュカインの実の数十倍の効果が得られるのだとも言われた。何せ、あの実をさらに大きく育てたのだから。
 そしてこの話には続きがある。そのうちに娘の埋められた場所から桜の木が生えてきて、みるみる育った。だが、花をつけるころになるとどこからか泣き声が聞こえるという。桜の花にほのかに赤みがあるのはその赤みが血に染み込んだ娘の血だからなのだ。
 一方、男はといえば黙って桜の世話をしたという。一説によればこれがホウエン地方における櫻守、樹医の始まりだとも言われている。現在でも樹医の多くはジュカインとその眷属を連れているという。

ダークライの民俗学

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人やポケモンに悪夢を見せるというダークライにはこんな都市伝説がある。

生前ホラー漫画家だった男が事故死した。
即死だったのだろう、痛みがないのが幸いだったが、気がつくと黒い体になって悪夢を撒き散らすダークライになっていた。
そんな彼の頭上に誰かの声が響いた。

お前はホラー作家だったのだろう……
これからは人々を悪夢で怖がらせろ……

今や異形の形となった作家の中に、時間を遡るようにして、死後の記憶が流れ込んできた。
その光景は葬式を前にした親戚の集まりで。
男の遺体を納めた棺桶に向かって様々な言葉が投げつけられていた。
生前、彼の仕事が親族に理解されることはなかったから。

「まったく、陰気な子だったよ。ロクでもない漫画ばかり描いた」
「こんな残酷な絵を描いて何が面白いんだろう」
「一家の恥さらしだった」

そうか。ならばもっと見せてやる! と男は思った。
まだまだ描きたい話はたくさんあった。
描ききれないアイディアがたくさんあった。
まずは傲慢な一家が没落していく様をこれでもかというほど残酷に描き出してやろう。
そうして、彼らの家族は次々に精神を病んだ。
ある者は自殺し、ある者は入院し、家はみるみるうちに没落したという。


あるいは、ダークライは元々スリーパーであった、という話もある。
そのスリーパーは悪夢を食べるのが好きすぎて、悪夢を食べたいが為にポケモンや人を眠らせた。そして次第に悪夢を見せる能力をも獲得していったのだ。
ある時スリーパーは、悪い夢ばかり見させるからと捕らえられて、瓢箪に封じられた。
そうして永い時が経った。
その間、悪夢が食べたい、悪夢が食べたいとずっとスリーパーは思っていた。
瓢箪は神社の本殿の奥にしまわれて、何百年も経った。
いつしかその由緒が風化し忘れられて、ついに封印者の末裔が瓢箪の蓋を開けてしまった。
が、中から飛び出したのはスリーパーではなかった。
封印されたポケモンはすっかり姿が変わってしまい、ダークライになってしまっていたそうだ。

ポリゴンD(デリート)

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 Bの書く文章が好きだった。
 アニメが放送されて、ハマった作品があった。それで二次創作漁りをして、Bの文章をたまたま読んだのだ。
 だから私が二次創作を始めたのはだいたいBのせい。
 それからはとても楽しかった。二次創作友達が増えて、推しカップリングについて盛り上がって、アニメが終わっても原作で新展開がある度に私たちは夜が更けるまで話し合った。
 特にBとCには仲良くしてもらった。好きなキャラとカップリングも一緒だったし、同人誌即売会があれば一緒に行き、時にサークル参加したし、終わったら一緒にアフターをした。

 だが、ある時、Bが書く事をやめてしまった。
 Bはずっといやがらせに遭っていた。

 毎日メールが来る。
「へたくそ」
「死ね」
「お前のは全部パクり」
「まじで投稿するのやめてくれない?」
「小説とか絵の描けないやつのやることだし」
 そんな心無いメールが、毎日毎日、複数のアドレスから送られてくるのだ。

 それだけじゃない。
 創作SNSでせっかく貰った評価タグ、例えば、
「○○100users入り」
「愛がなければ書けない」
「ポッポ肌」
「目からハイドロポンプ
 そんな評価タグも一晩で消し去られてしまうのだ。

 最初は私とCで励まして、なんとかBも続けていた。
「きっと、アンチよ」
「地雷カップリングを攻撃してるのね」
「でも気にする事無いよ」
「スルーしてればいいんだよ」
 そう言ってCと二人で励ました。

 けれどついに、彼女の心は折れてしまった。

 Bはジャンルからいなくなった。
 ネットにあげた作品をすべて消してしまった。アカウントも消してしまった。オンリーがあってももう彼女のサークル名はどこにも見当たらなかった。

 Bの書く文章が好きだった。
 私は犯人を憎んだ。
 Bの筆を追った犯人、ジャンルから追い出した犯人を。
 私が151ちゃんねるのオカルト板に出会ったのはそんな頃だった。

 そこには不思議で怖い話がたくさんあった。
 鳥居を潜ったら、鳥居をもう一度潜って出ないといけない話。
 ある日突然、ポケモンがしゃべった話。
 タブンネを殺してはいけない話。
 バトルサブウェイのあるはずの無い車両の話、あるはずの無い駅の話。
 ミレアでタクシーの無賃乗車をすると魂を運ばれてしまう話。
 GTS経由で交換され続けている、という何でも盗んでこれるというブラッキーの話……。
 もともと怖い話は好きだった私は貪るようにそれを読み漁った。

 そしてある時、私は思いついたのだ。
 都市伝説を作ってやろう。
 ネットのいやがらせ、創作クラスタの敵、それをやっつけてくれる存在を創ろう。
 せめて作り話の中だけでも、復讐してやるのだ……。

 そう思い立ってから、私の執筆速度は尋常じゃなかった。
 まるで何かが憑いたみたいに、私はキーボードを叩き続けた。


 ポリゴンD(デリート)。


 私はそれに名前をつけた。
 ネット上の事だから電脳空間を自由に行き来できるポリゴンが良いと思った。
 Dの姿はポリゴンZに近い。
 タイプはノーマル・ゴーストだ。
 その容姿もゴーストらしくより不気味に設定した。

 ポリゴンZはもともと異様な姿をしている。
 ぐるぐるの目玉、胴体から寸断された首と両腕。
 ただでさえ首ちょんぱだとかバクってるとか言われているその姿をもっと異様にしてやった。
 もともと赤・青・赤で構成される胴体の青い部分をぽっかりと空洞にして虚にしてやったのだ。
 寸断された胴の上下からはデータが溢れ出している。
 ポリゴンDは虚ろだ。
 いつも空腹で満たされない。
 獲物を求めて電子空間を彷徨っている。
 その獲物は同じく虚ろな人間達だ。
 
 気に入らないカップリングの作者や、自分より評価の高い創作者、ランカー、そして何よりちょっと目立つから気に入らない奴……そんな人たちに嫉妬していやがらせメールを送ったり、ダミーアカウントを使って攻撃したり、151ちゃんねるで悪口を書いたり……。
 そんな事をしているとポリゴンDがやってくる。

 ポリゴンDの得意技は「はかいこうせん」。
 最初は犯人のいやがらせメールやいやがらせコメントを「はかい」して食ってしまう。
 やめなければ、アカウントを「はかい」して食う。
 SNSアカウント、メールアカウント……それでもやめなければ……。
 だんだんとその味を覚えたポリゴンDは、発信源であるあなた自身を「はかい」しに行くだろう。

 あなたが何十個目か目の新しい嫌がらせ用のアカウントでメールを送ろうとしたその時、突然ディスプレイが暗転する。暗い画面から二つの目。
 バグったようなぐるぐるの目。
 目があった時はもう遅い。
 ディスプレイからは「はかいこうせん」が放たれて、リアルの存在であるあなたは「はかい」される。
 「はかい」されたあなたはもう、リアルのどこにも存在せず、ネット上にしか存在しないデータとなってポリゴンDに食われてしまうのだ。

 けれどポリゴンDは満たされない。
 食べても食べても胴からデータが溢れ出して出ていってしまうから。
 そしてポリゴンDは次の獲物を求め、ネットの海を彷徨い続ける。

 中途半端に消化され、胴からあふれ出て散り散りになってデータはもう二度と一つには戻らない。
 いずれ消えゆくのを待つ定めだ。
 稀に、誰の保存用のファイルを置くデータストレージに漂流して紛れ込む事があるらしい。

 もし、これを読んでいる人達がデータストレージで見かけないデータを見かけたら。
 それは存在を「はかい」された誰かのデータの切れ端かもしれない……。


 作り話を書き終えた頃、時刻はとっくに深夜の二時を過ぎていた。
 151ちゃんに書き込みをすると眠気がどっと襲ってきた。
 私は机に突っ伏して寝息を立てはじめた。

 感情を吐き出した事で満足した私は、それ以降は不思議とオカルト版を見なくなったし、自分が作った都市伝説の事も忘れていた。
 というのも、来月にはイベントを控えていて、それどころではなかったのだ。
 Cと合同で本を出す事になていた。原稿を落とすわけにはいかなかったのだ。
 だから、イベントが終わってから、chirutterにRTが回ってきた時は面喰らってしまった。

「地雷カップリングに噛みついたり、いやがらせメールをしたりする人、時々いますよね。でも気を付けてください。そんなアカウントは次々にポリゴンD(デリート)に消されています。知り合いも消されました。覚えのある方は悔い改めて下さい。みなさんも消されないようにお気をつけください……」

 まじかよ。
 私は思わず吹き出してしまった。
 私がオカルト板に投稿した創作物である都市伝説、それにまさかこんな形で再会するなんて。

 ポリゴンDで検索をかけてみる。するとかかるかかる。
 大量のツイートが引っかかった。

「知り合いのアカウントが消えたんだけどwwwついにポリゴンDに消されたかwww」
「ジャンルで問題を起こしていたあいつのアカウント消えたらしい。ポリゴンDの仕業かな」
「ポリゴンD仕事早いなwww」
「ポリゴンD描いてみた」
「月光Pです。今話題のポリゴンDで新曲作りました #smilemovie」

 しばらく見ないうちにポリゴンDは成長していた。
 存在は書かれ、広がり、描かれ、広がり、歌われ、また広がっていた。
 これは創作。151ちゃんに書いたただの作り話。
 けれどポリゴンDは命を持っていた。
 このネットの海の中、私のキャラクターはたしかに命を持っていたのだった。


 Cと連絡がとれなくなったのは、それから一か月後の事だった。

 突然、タイムラインからCがいなくなった。
 最初はリムーブされたのかと思った。だがアカウントそのものが消えているようだった。
 普段は見ていない彼女のサブアカも検索してみたのだが、かからない。
 創作SNSのアカウントも停止されていた。
 メールもすべて戻ってきてしまう。

 イベントの時くらいにしか使わない携帯にかけてみた。
 だが、

『この番号は現在使われておりません』

 電子音が無情に告げた。

 そして、数か月後のイベント。
 Cはとうとう姿を現さなかった。
 もしかしたら、と淡く期待していたが、何かが冷めた。
 それ以降、私は急激にCへの興味を失っていった。

 BもCもいなくなってしまったけれど、アニメの二期もあって、新しい友達もできた。
 推しカップリングもまだまだ熱いし、作りたい話もたくさんあるのだ。
 二か月後にはまたオンリーもあるし原稿を進めなくちゃ。
 今度は温めていたシチュエーションで、書くんだ。

 そんなある日、原稿も進んだからバックアップを取ろう思って、私は久々にオンラインのデータストレージにアクセスした。
 万が一、パソコンのデータが消えてもいいように、原稿をここに入れているのだ。

「あれ?」

 私は声を上げる。
 小説のレイアウトテンプレートやメモや書きかけの原稿に混じって見慣れないテキストファイルが混じっていた。

 ○○ ○○子.txt

 ああ、これCの本名だわ。
 私は久々にその存在を思い出した。
 たぶん、サークルチケットを融通した時に住所をメモったやつだろう。
 だが今はもう不要だ。

 私はそれを右クリックすると中身も見ないで削除した。

 

 

ネタメモ:書き出しヨマワルの島

ヨマワルってなんか髑髏の檻に魂閉じ込めたみたいな感じだよね。そう考えるとワクワクするな。

ヨマワルを連れた男がいた。男いわく、これは私の妻なのです。妻が死ぬ時に私に言ったのです。
「私が死んだら首を切り、身体とは別の場所に埋めてください。百日目にしゃれこうべを掘り出して服を着せてください。そうすればずっと貴方の傍におります」

オリベ教授と島のフィールドワークに出るツキミヤ
そこはかつて発掘のバイトに行ったことのある島だった

ある島では人もポケモンも首を切って胴体とは別に埋葬する風習があった。100日目に髑髏だけを掘り出し服を着せ、祠へ祀る。するとヨマワルとなって、子孫を守ってくれると信じられていた。今ではめったに行われなくなったが今でも島の祠ではたくさんの服を着た髑髏を見る事が出来る。

高校の夏休みにツッキーが島に発掘のバイトをしにいってポケモンセンターに寝泊まりしてるんだけど、島のおねえさんに誘われて初体験。
家に来ないか誘われる。スイカが冷えてるの。退屈してるのよ付き合って? なんて言われてさ。それでさ、扇風機回してる部屋で待ってたらさ、下着つけてないお姉さんがスイカ切って部屋にきてさ、女として誘うわけですよ。

「この島の風習でね、人やポケモンが死んだら首を斬り落として庭に埋めるのよ。そして百日したらしゃれこうべを堀り出してね、服を着せて祠に収めるの。百一日目の夜にしゃれこうべの中で蝋燭に火をつけてね。そうしたらヨマワルになって生まれ変わるのですって。だからあの人とももうすぐ会えるわ」

一緒の場所にフィールドワークに行ったツッキーとオリベ教授。夜にこっそりと宿を抜け出て獲物を堪能したツッキーが朝に戻るとオリベ教授が焚火を起こしてコーヒーを用意している。
「飲むか」
「はい」
「お前さ、何か悩んでいる事があるんじゃないか」
「……いいえ?」
コーヒーはすごく苦い。