017のネタ帳

ポケモン二次創作ネタとか。

ジュカインと櫻守の話

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 ジュカインの背中の実は植物を元気にする事はよく知られている。だから桜を育てて、美しく維持管理する櫻守(さくらもり)はよくジュカインを連れている。元気のない桜に実を与えて、花を沢山咲かせるためである。
 ある古典には櫻森のもとに樹齢五百年の桜の花を再び咲かせて欲しいとの依頼が舞い込む話がある。だが、実を与えようとするとジュカインが拒否する。
 その様子を見た櫻守は依頼主にこう告げた。
「この桜の望みは土に還ることです。今年ばかりは咲かせましょうが、後はそっとしておやりなさい」
 依頼主が了承するとジュカインはようやく実を渡してくれた。
 桜は盛大に花をつけ、花が散ると共に枯れたという。


 ジュカインの背中の実はひとつ埋めると畑一反(300坪)の作物が豊作になるといわれた。
 昔、ある男が山でジュカインに出会った。男がその背中の実を欲したところ、ジュカインから出された条件が男との交わりであったという。男の精を得たジュカインの背中になった実はやがて一列がキモリ、一列が人間の赤ん坊になったと言われている。
 そのうち一人の女の子は村で育てられた。ところがその子が大きくなった頃、飢饉が訪れる。村では寄合で娘を人柱にと決めてしまう。元々はジュカインの実なのだから、埋めれば作物がなるだろうというのだ。男は娘を連れて逃げたが、途中で捕まって、娘は畑の真ん中に埋められてしまった。お陰で作物が育って村は助かったという。
 ホウエンにはジュカインの実から生まれた子の話が多くて伝わっているが、残念ながらその話の多くはこのような形で大人になることなく土に還ったというものだ。また、育てた子を生贄にすれば普通のジュカインの実の数十倍の効果が得られるのだとも言われた。何せ、あの実をさらに大きく育てたのだから。
 そしてこの話には続きがある。そのうちに娘の埋められた場所から桜の木が生えてきて、みるみる育った。だが、花をつけるころになるとどこからか泣き声が聞こえるという。桜の花にほのかに赤みがあるのはその赤みが血に染み込んだ娘の血だからなのだ。
 一方、男はといえば黙って桜の世話をしたという。一説によればこれがホウエン地方における櫻守、樹医の始まりだとも言われている。現在でも樹医の多くはジュカインとその眷属を連れているという。