バクダンボールの民俗学
ビリリダマ。
バクダンボールとも云われるこのポケモンが現れたのは現在の赤と白のデザインで知られるモンスターボールが大量に出回って以降であるという説がある。それはたとえば下記のような都市伝説としても語られる。
モンスターボールを長く使わないまま放置していると、中に魂が宿ってビリリダマになる。ある主婦が押入れを整理していたら、旦那の八つ揃わなかったバッジのケースや釣竿と一緒に小さなビリリダマが何匹か転がり出てきて腰を抜かした。
と、いう具合である。
また下記は、がっこうのこわいうわさばなし(中学館)に掲載されたものである。
そういえば昔な、いじめられっこの少年がいてな、学校に行くのが嫌で嫌で仕方なった。いつもボールを見つめながら「ああ、ポケモンはいいなぁ。ボールの中に隠れられて。僕もずっとボールの中に入っていたい」と言っていた。
それから数日後のことだよ。少年がいなくなったのは。
総出で探したけど見つからなくて、代わりに草むらの中から皆が見たことのないポケモンが見つかった。モンスターボールに似ているけど、明らかに大きさが違うし、目がついている。そのポケモンはいまではビリリダマと呼ばれているそうだ。
……少年の行方は未だにわからないんだって。
モンスターボールに宿る魂には諸説あり、死んだポケモンであるとか、旅を終えたトレーナーやポケモンたちの未練である、とも説明されている。使わないボールはビリリダマにならないように引き取って供養する神社もある。未練を抜いた後は近所の子供達に配っているという。
ビリリダマは刺激によって自爆する危険なポケモンとしても知られているが、あるいは夢や未練がせめて華々しく爆発することを選んだのだ、という風に考えるとまた見方も違ってくる。
ならば進化系のマルマインは夢や未練をこじらせた果てであろうか。だとすれば、ポケモンリーグの舞台や大きなコンテストの大会で派手に大爆発するマルマインは、あるいは届かなかった思いの塊が長き放浪の末、ついに願いを遂げたのだと考えることができるかもしれない。