神社のおばちゃんと尻の話
小説「クロ」の取材でカナズミシティこと博多に行ってきたのですが、そこで立ち寄った櫛田神社のおばちゃんから聞いたすばらしき男の尻の話を書きます。
櫛田神社とは、博多の歓楽街、中洲川端の近くにある神社でして、飾り山笠が有名です。そしてこの櫛田神社の素盞嗚大神に対する奉納の行事として行なわれているのが、博多を代表するお祭りである博多祇園山笠であります。
私が訪問したのは6月28日。7月1日にお披露目となる飾り山笠を工務店の職人さんたちが据え付けていました。
この神社には博多歴史館という施設があり、300円で入れます。山笠ビデオ上映中とのことで、お邪魔してみることにしました。
山笠というのは、大きな博多人形が飾り付けてある神輿のようなものです。
博多祇園山笠は7月1日の飾り山笠お目見えに始まり、7月15日の追い山まで続きます。追い山では法被と締め込みの神事装束に身を包んだ男たちが山笠を舁き回し、町内を駆け巡ります。
館内では威勢のよい追い山の様子がビデオ上映されており、歴史館のおばちゃんが横に立って解説してくれます。
そして問題は、このおばちゃんが面白すぎることです。
「追い山は朝5時前から始まりますので7月14日夜には来てください。この日の博多は喫茶店だろうがなんだろうが夜通し営業、大人も子供も起きてお祭りだオールナイトフィーバー!!!」
いやもうおばちゃんの解説が最初っからフィーバーだよ。
六、七十代くらいのおばちゃんがいうので余計面白い。
「朝6時ごろには終わるので6時半に出れば8時半に羽田なので、弾丸ツアーできますよ」
いや、そんな体力ないよ…。
「あんまりトラブルは起きたことない。喧嘩っ早い人とか乱暴な人は追い出されちゃうから。地元の人は3~4割くらい。地元じゃない人でも地元の人に保証をもらえば参加できます」
「女の人はあくまで裏方。参加できません。でも男の人も5キロ走れんといけない。祭りに備えて普段からジム通いでね、バチバチに仕上げてくるの。祭りは七千人くらい参加するんだけど、引き締まった男のケツが見放題」
男のケツが見放題。
どうやら、おばちゃん的にはここが大切ポイントのようです。
画面に二番手の恵比寿流の山笠が映ります。
「この女の恵比寿さんを見てください。後ろにね、男の恵比寿さんがいるんだけどちっこいです。これは博多の夫婦の力関係を表しています。奥さんいないとなんもできない。あっこれここだけの話ね」
「ちゃんと鍛えないと、お父ちゃん、うちに恥かかせんといて、と怒られます」
「七十代のおじいちゃん、山笠は引退しちゃったけど今でも走ってて、足がすごい引き締まっている」
「山笠の人形を作るのは、博多人形師の中でもめちゃくちゃうまい人でステータス。俺、四番山笠の掘っとーとよ、などと自慢できる」
いつ練習してるんですか。
「7月10日から練習が始まる。その時道路は通行止めで救急車以外は通さない。山笠がすべてに優先、渋滞だろうと知ったこっちゃない。これは神事、山笠には神様が宿ってるし、神振る舞いだから」
神振る舞い。カッケェ。
「小学生も先走り、この日は学校お休みです。校長先生が予行練習の走りで山笠に乗る。博多はそういう町です」
あまりにおばちゃんがおもしろかったので、すっかり山笠に夢中になった私は、山笠界?の重鎮が書いたという本を購入、帰りの飛行機で読むことにしました。
▲おっしょい!山笠(石橋清助 著)
するとそこにはいい男の尻に関する衝撃の物語が綴られていたのでした。
ある時、山笠をハワイで舁くことになったのですが、そこで問題が発生します。
(本文より)
文化の違いといったらそれまでですが、フェスティバル実行委員会が「締め込みはセクシーで認めることはできない」と言い出したのです。(中略)結局、福岡JCの役員がハワイに行って、実行委のS・ダルシー委員長と直談判。難航したようですが、「銅像のカメハメハ大王もふんどしではないか」と説得。主催者側が折れて解決をみました。
(本文より)
若手が「女性からお尻を触られた」と話し、大笑い
▲セクシーだと問題になった締め込み。しかしこれは祭りの期間中は正装でありホテルとかもこれでOKだとか…
おばちゃんがアピールする引き締まった男のケツ。尻。
どうやらハワイ人には刺激と吸引力が強かったらしいです。
しかし、ここは博多の男、さらなる攻めへ転じます。
(本文より)
この年のお祭りには、ダルシー委員長を招待。集団山見せでは「締め込み」姿で台上がりをしてもらいました。日系四世の委員長は「僕の日本人的な部分がエキサイトしました」。
ダルシー委員長ォ!
そして男たちの尻は世界へと羽ばたきます。
オーストラリアのブリスベーンとニュージーランドのオークランドにも山笠を舁きに男たちは空を飛びます。
(本文より)
道中は「ワンダフル」「オー、ヤマガサパレード!」といった歓声が起こり、終了後には女性市長のアキントンさんから「ダイナミックな文化を見せていただきありがとう」というコメントをもらいました。ただ、締め込みに対して市民の一部が好奇の目で眺めていたように感じました。
これに対して筆者は。
(本文より)
互いに理解しあうには交流を盛んにするしかないと思います。
と、きわめて冷静かつ含みをもたせて締めています。
そんなことをフォロワーにDMで話したところ、
「前にツイッタのマンガかなんかでも年配の女性に「男の価値は尻よ!祭りで見極めるのよ!」みたいなアドバイスされてたの見たことある」
という本質情報が得られました。
男の価値は尻。
なるほど。新たな知見を得てしましました。
尚、本によればアメリカあたりでやった際に地元の新聞社がめちゃくちゃ告知してくれたらしく、最高の人の出を記録したとあり、多くの人々が引き締まった男の尻に興奮したものと思われます。
また、博多でやる本来のほうの山笠は、最近は外国人の参加も増えているらしく、国際色豊かな男の尻が見放題となっている模様です。
先にも述べた通り、地域の人間でない人が入る場合は、地元の人が保証するとお祭りに加われます。つまりここに加われた人というのは地元民も認める礼節と尻の持ち主といことになります。
ところで、山笠は走ってる途中で水をかけるのですが、その水を「勢い水」といいます。なんかこう魅惑の響きですよね。
勢い水に濡れる引き締まった男の尻……。
いつか生でみたいものですね。
以上、尻の話でした。