017のネタ帳

ポケモン二次創作ネタとか。

議員と秘書とFaceApp

「坂井、おはよう」
 僕は夢を見ているんだろうか。
 朝、参議院会館に行くと山田さんがおっさんから若い女性になっていた。ウェーブのかかったロングヘアに女性らしい笑みをたたえた山田さんは出来る弁護士風だったが、確かに山田さんであるとはわかって不思議だった。
モナーダの一人にアプリで女の人にされちゃってさ。朝起きたらこうなってた」
 と、山田さんは言った。
 麗しの女性国会議員になった山田さん。トレードマークの蝶ネクタイは髪留めになっていた。
 世間ではFaceAppというアプリが流行っていた、男性の写真を女性に加工できるらしいアプリはツイッターで大流行。山田太郎ホームページでは山田さんの写真を素材として提供しているから、それが使われてリボンマークの支持者の一人が山田さんを女の人にしちゃったらしい。
 でもなんで、実際の山田さんまで女の人になっちゃってるんだ!?
「まぁまぁ今日も忙しいし、行こうよ。部会始まるよ」
 こともなげに山田さんが言った。さすが表現の自由でやってきただけはある。支持者に僕とのBLを書かれたことがあるだけあってこういうことには動じないんだなぁ、すごいなぁと僕は思った。
 今日も朝から部会があった。山田さんも表現の自由の観点から積極的に発言をしていたのだが、議員たちが驚きの混じった表情でこっちを見ていて、どよめいていた。そりゃそうだ。それでもどういうわけか他の議員にも山田さんは山田さんだとはわかるらしかった。
「どうしようか。こんななりで太郎もなんだし、しばらくは花子を名乗ろうと思うんだ。やっぱり太郎に対応する名前は花子だよね」
 山田さんはそう言った。
「きゃー、どうしちゃったんですか、山田さん!」
 誹謗中傷対策PTで座長が驚いていた。すれ違う議員達、議員達がみんな声をかけてくる。
「どうも。どうも。しばらくは花子を名乗ろうと思うのでよろしくお願いしますね」
 山田さんはもう慣れたらしく、女性らしい立ち振る舞いで挨拶をしていく。
「山田さんこっち向いて下さい」
 次の会議で山田さんが席に座るとシャッター音がした。藤末健三議員だった。
 彼はさっそく、
「最近はFaceAppというアプリが流行っているそうです。その影響か山田太郎さんが花子さんになってしまいました。もちろん山田花子議員と連携していきます!」
 と、ツイッターに書き込むとツーショット自撮りをアップした。

 タイムラインは異様な盛り上がりを見せていた。
 藤末議員のツイートがどんどん拡散されていく。バズっている。
 これを見たリボンマーク達が反応しないわけがなかった。花子先生のイラストが投稿されるのに時間はかからなかったし、その日のうちに藤末議員と僕はモナーダ達の魔の手によってFaceAppでネットにあげていた写真を女性化された。
 しかしこれも表現の自由だ。尊重せねばならない。
 そして次の日には、僕も藤末議員も女性秘書と女性議員になっていた。

『国会議員、次々に女性に! 背後に謎のアプリ、次世代選挙戦略か!?』
ジェンダーギャップ解消に妙案!』
『香川のゲーム規制にユニーク抗議! 女性議員に華麗な転身!』
『ポリコレへの抵抗、世界が注目』

 次の日にはツイッタータイムラインでいろんな憶測やニュースが飛び交っていた。
「なんかおぎの議員も女性になっちゃったらしいですよ?」
 ツイッターで誰かが言ったが、それは当たり前のことだったのでみんな無視した。
「藤末健三改め、藤末健子です。頑張っていきます!」
 藤末議員はさっそく自撮りを投稿していた。順応が早すぎだろう。さすがはツイッター議員だ。
 音喜多駿議員は、音喜多駿子議員となったが相変わらず笑みがうさんくさい。今は弘子と名乗り始めた、三谷英弘議員はかなりの美少女になってまんざらでもなさそうだった。
 そうして国会議員のみならず、表現の自由派議員を中心に地方議員のみなさんもどんどん女性になっていった。
 やぶはら太郎議員はやぶはら花子議員に、
 小泉しゅうすけ議員は小泉すけ子議員に、
 松本ときひろ議員は松本とき子議員に、
 そしておぎの稔議員は、白髪ケモミミ巫女美少女おぎのみのりに…………あっこれは前からだった。
 とにかくこのような感じで華やかな女性となり、タイムラインを彩るのに時間はかからなかった。
 そしてツイッター界のレジェンド、河野太郎議員はとっくに転身していた。ノリノリで見つけにくい自身の女体化イラストを引用RTし、フォロワーは倍の300万になっていたし、相変わらず竹の時計をつけていた。名前が河野花子になってややこしかった。
 連日ツイッターは熱にうなされたようだった。
 なんかさんちゃんねるの視聴数も増えた。
「にゃんぱすー☆」
 女性三人で言うと、なんかこう、キマるよね。

 こうして次のコミケでは、政治島は大いに盛り上がり、AFEEのブースではモナーダの一人が書いた山田×坂井百合小説がブースを彩ることになった。有名絵師の美麗挿絵付きで。ここでは書けないような様々な事情の本も様々な島にあったと聞く。今日ほど日本に表現の自由かあってよかったと思った日はない。
 コスプレブースに山田花子議員のコスプレが現れたと売り子の一人が教えてくれた。
 今日もコミケは盛況だったし、超党派になったAFEEのコミケ街宣も盛況だった。というかめっちゃ人増えてないか!?
 壇上に立った栗下善子議員(元:栗下善行議員)がなんかうれしそうだ。
 そうして皆さんお待ちかね、花子議員の出番がやってきた。
 街宣車の上でフライパン炙りされながら、汗ばんだ花子議員が演説する。
「女性になってもやることは変わりません! 次はデジタル著作権ですよ!」
 いつもよりシャッターの数が多く聞こえる気がするのだがきっと気のせいだ。
旗は相変わらず前参議院議員の前にバツ印、もうずっとこの旗だ。太郎の横には「改め花子」と小さく僕(私)が書き加えていた。

 ……ところでさ、いつ僕達は元の性別に戻るんだろう?


「あっすいません、すっかり山田花子議員が染み付いちゃって」
 秋も深まってきた頃、白い猫のようなモナーダの一人がとぼけたツイートをして、アプリで山田さんを男性化させたので、ひさびさに山田さんが太郎に戻った。蝶ネクタイも所定の位置に収まった。藤末健子議員もいつのまにか藤末健三議員に戻っていた。
「心機一転、頑張っていきます!」
 藤末議員はそう言って自撮りをアップした。
 が、問題はまだ残っている。
「なんでですか、山田さん!」
「え、どうしたの、坂井」
「どうしたのじゃないですよ! 山田さんも、藤末さんも、AFEEのコミケ街宣組もみんな男性に戻ったのにどうして僕だけ戻らないんですかァ!?」
 すると蝶ネクタイが元の場所に戻った山田さんは
「そうなの? いいじゃん、坂井はそのままで。かわいいし」
 と、言った。
「山田さん!!」
「いやーだってさぁ、陳情でも坂井さんそのままがいいので戻さないでってきてるんだよね。だからいいんじゃない? そのままで」
「ギャーッ! ひどい! いくら山田さんでもそれはひどいです!!」
 僕は抗議した。
「それってひどいの?」
 山田さんはなんか納得いかないという顔をしたが、
「そうだなぁ。じゃあ、著作権法改正のパワポみたいな全会一致のパワポまた作ってよ。そしたら元に戻るんじゃない?」
 と、言った。
「本当ですか?」
「たぶん」
「たぶん!?」
 こうして僕は今日も秘書業に励む。まだ見ぬ全会一致を目指して……!
 山田太郎公設第一秘書、坂井崇子の戦いはこれからだ!

 いつか、坂井崇俊に戻るその日が来ると信じて!


おしまい

 

 

#山田太郎 #坂井崇俊 #ごめんなさい

参考:

参議院議員 山田太郎 公式webサイト

AFEE:エンターテイメント表現の自由の会 公式HP