017のネタ帳

ポケモン二次創作ネタとか。

冥婚とポケモン

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 冥婚、死後婚という言葉をご存じだろうか。
 家の者が未婚のまま若くして亡くなると、その家族があの世の伴侶を用意する行為を言う。
例えば道に赤い封筒を落としておき、それを拾った者を死者の伴侶とするようなものから、花嫁 人形を奉納する、結婚式の様子を絵に描き奉納する、若くして亡くなった男女の両家で話をまとめ結婚を決めるといった形など様々である。
 特に昔は結婚という行為が人生のライフステージにおいて非常に大きな意味を占めていた。それはほとんど義務とも言えた。だから、親が結婚相手を見つけてくるのは、親の果たすべき努めであり、子のためにするべき行いであったのだ。
 ところが、現在は結婚しないまま人生を送る人も多くなり、結婚観も多様となり、そういった行為を余計なお節介と捉える向きも出てきている。

 たとえば、最近出版されたマンガにはこんな場面がある。登場キャラはゲンガーとムウマージ。人間としては若くして死に、死後ポケモンとなったのだが、親同士が勝手に死後の結婚を決めてしまい、それがどうしても嫌だと言うのだ。
 彼らはヨルノズクが運営するノズク堂法律事務所を訪れる。

「まず、送りの泉の役所に行きます」
 と、ヨルノズクは案内する。
「そこで緑の紙を貰って判子押してください。拇印でいいので。尚、当事務所は離婚ツアーを組んでおり、団体料金でシンオウまでいけますのでお得ですね。自由時間ありまして観光も可能です」
 これは創作内の話であるが、まさに現代的価値観、個人主義を反映したものと言えるだろう。

 また、冥婚するにしても価値観の反映させ方が多様になった。例えば余命半年というホウエン地方の故・牙蛇ウロコさん(仮名)は、画家に頼んでサングースと結婚するムカサリ絵馬を描いてもらったのだという。
 ムカサリ絵馬というのは、絵馬の上で結婚式の様子を描き、これを寺に奉納するものである。牙蛇さんの死後、寺にはザングースの結婚の様子を描いた絵馬が無事に奉納されたそうだ。
 住職は言う。
「私のところではこういった絵馬を受け入れています。先日はリザードンのムカサリ絵馬が奉納されました。ヒトカゲと旅立ちたかったけれど、身体が弱くて叶えられなかった方のたっての希望です」
 見れば、筋肉質でマッチョなリザードン若い女性をお姫様だっこしていた。いかにもちきゅうなげが得意そうだった。
 ムカサリ絵馬は死後家族が用意するものであったが、このように個人が自身の為に用意、特に生前婚では叶えられないような形で叶えるために用意する割合が増えてきており、個人主義および様々な性愛への変化を感じるところである。

 また、こういったムカサリ絵馬を多く手がけるという画家は語る。
「あの世でキュウコンと結婚したいって人、なぜかすごく多いですね」
 筆者には理解できない世界だが、死者の希望は大切にされるべきだろう。