017のネタ帳

ポケモン二次創作ネタとか。

電車とポケモントレーナー

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 ●乗り鉄にしてトレーナー

 あなたは「乗り鉄トレーナー」をご存知だろうか。
 世の中には多くの鉄道ファンがいて、電車の撮影が好きな人を撮り鉄、電車に乗るのが好きな人を乗り鉄などと呼んでいる。両者は兼ねることもあるが、今回は主に後者について取り上げたい。何を隠そう後者の中でポケモントレーナーでもあるのが「乗り鉄トレーナー」である。その興味深いライフスタイルについてごく簡単にではあるが紹介したいと思う。
 旅のポケモントレーナーの移動方法には、徒歩、ポケモンに乗る、乗り物に乗るなどがあるが、その中でも乗り物、特に鉄道での移動にこだわるのが乗り鉄トレーナーである。
 彼らは鉄道に乗って移動しながら、出会った人々とバトルをする。そして鉄道でキリのいい場所まで移動したり、終電の時間が近づいたら降車し、近くの街に宿泊し、日が昇ればまた電車に乗って移動する。そんな生活をしている者達である。
 田舎のほうに旅をしたことのあるトレーナー諸兄であればご存じかと思うが、田舎というのはとても電車の待ち時間が長い。一時間はおろか二時間さえも当たり前である。正直暇である。なのでトレーナーが出会えばバトルが始まる。暇を持て余した駅員がバトルを仕掛けてくる事もままある。むしろ田舎の駅には簡易なバトルフィールドがある。電車は来ないし、土地はあるからだ。勝負の制限時間は「電車が来て出発するまで」である。
 彼らは時刻表に記載された時間と駅の時計を見比べて何分でケリをつけるかを考える。バトルの前に発車時間を確認して、何対何のバトルにするかを相談するのである。そして賞金代わりに駅弁を賭ける。
 強者を求めて電車で果ての駅まで遠征したり、無人駅で待ち構えて電車に乗ってやってくる同志達に勝負を挑む「バトル鉄」と言われるトレーナーもいるそうだ。
 鉄道オタクと侮るなかれ、これでいてなかなかバトル経験が豊富なのが彼らである。カビゴンが寝ていて乗っていた電車が止まる、ゴローンが転がってきて電車が止まる、そんなことは乗り鉄トレーナーをやっていれば「あるある」であり、線路を塞いでいるカビゴンやゴローンとのバトルを手伝う事は彼らにとってのご褒美であり、名誉である。
 鉄道員は線路を傷付けずに電車の行く手を阻むポケモン達とバトルし、路線から退却させるプロである。そんな業務が発生することもあって、ジムバッジをたくさん持っているトレーナーは鉄道会社への就職が有利なのだと言われている。

 
乗り鉄トレーナーの手持ち

 ポケモントレーナーの手持ちには一定の傾向があり、とりつかいならば鳥ポケモンを、からておうやバトルガールなら格闘ポケモンを所持、というような特徴があるが、彼らは鉄道好きの集まりなのでその傾向はバラバラである。とはいっても、ある程度の特徴を見いだす事はできる。
 その特徴とはずばり、「一緒に電車に乗れるポケモン」である。なので身体の大きすぎるポケモン、重すぎるポケモン、高熱を発するポケモンなど、同乗に支障の出るポケモンは敬遠される傾向がある。
 多くの鉄道会社の規則では、特別に禁じられる場合を除き、電車内では膝や肩に乗るポケモンは出していい、とされている。そうでない大型のポケモンは本当は出してはいけないのだが、多くの人は電車内が空いているなら出してしまうためにルールとしてはあまり機能していない。けれど、電車が混んできたらしまうというマナーも彼らはちゃんと持ち合わせている。そして懐に余裕がある時や、推し路線では切符をポケモンの分も買う。これは乗り鉄トレーナーの間では徳を積む行為として推奨されている。
 面白いのは彼らの中にはポケモンと一緒に電車に乗るため、あえてポケモンを進化させずに未進化にしておくという文化があることだ。この傾向は電車の混みがちな都市部でよく見られる。つまり彼らのポケモンは小さく未進化であってもそれなりに鍛えているため油断ができないとも言える。たまたま鉄道を使って電車待ちバトルをした中堅トレーナーのポケモンが、バトル鉄のスバメゴッドバードを喰らってノックアウト、目の前が真っ暗になった、という話はあまりにも有名である。
 とはいうものの、基本的には進化形の方がバトルが強いので、バトルして勝ちたい乗り鉄にはある種のジレンマがつきまとう。そして単純に進化形のほうが好みなのであっさり進化させる者ももちろんいる。
 そして、肝心のポケモンとの出会いだが、彼らに話を聞くと「電車を待っていたらポケモンが現れたので捕まえた」という話が非常に多い。駅弁を奪おうと襲いかかってきた、と話してくれたトレーナーもいた。
 また、姿が電車に似ているのでデンヂムシが好きで手持ちに加えたいと考えるトレーナーも多い。最近はICカード「デリカ」が普及したこともあり、カードのマスコットであるデリバードの人気も高まっているそうだ。
 余談になるが、鉄道員ポケモンは格闘やエスパーが多いと言われる。これは有事の際に障害物をどかしたりなどするのに向いているからである。「かいりき」や「いあいぎり」の得意なポケモンを連れている者も多い。
 また、ホウエン地方では線路をココドラに食べられないように嫌いな物質などを混ぜ込んだ鉄を用い線路を守っているが、それでも悪食の個体がいて線路を食べようとするため、仕方なく捕まえているという。故にホウエン鉄道員ココドラやその進化系を持っている事が多いのだ。


乗り鉄トレーナーの聖地

 乗り鉄トレーナーは乗り物に乗ることが好きなので、フェリー好き、バス好きを併発させがちだという。カントー地方ナナシマ行きのシーギャロップカントージョウト地方間を結ぶ高速船アクア号が大好きだ。ホウエン地方でタイドリップ号の名誉船長に就任したハギさんは若い頃は小さな船を乗り回して、乗り鉄トレーナーを大いに喜ばせた為、界隈では有名人であるという。
 また、彼らはアローラ地方のホクラニ岳のバスにも乗りたいと思っており、カロス地方ミアレシティでタクシー運転手とタクシー代踏み倒しバトルをしてみたいと思っている。が、いざ現地でタクシーに乗ってはみたものの、やっぱり運転手に悪くてそれができず、降車の際に料金を払った上で勝負を申し込んだという微笑ましいエピソードもあるという。もちろん、ガラル地方の鉄道や空飛ぶタクシーにも乗りたいと思っている。
 そして、彼らが最も憧れるのは、イッシュ地方の地下鉄兼バトル施設であるバトルサブウェイだ。いつか行きたい聖地、不動のナンバーワンである。彼らにとって憧れのトレーナーとはジムリーダーでも、四天王でも、リーグチャンピオンでもない。バトルサブウェイのサブウェイマスターである。その車両基地があるカナワタウンも憧れの地である。
 そして彼らは一人一人がそれぞれに自身の聖地を持っている。それはお気に入りの路線だったり、ある地方の終着駅だったり、ある時間のある列車の座席だったりする。その中には今はもう行くことのできない場所も多くあるし、一度乗ったきりだが忘れられない路線もあるだろう。
 もしも乗り鉄トレーナーに出会ったら、そんな聖地について聞いてみるのも面白いだろう。きっとあなたの知らない世界を教えてくれるはずだ。

 

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オリジナル版からの改訂でカケル君が重度の乗り鉄になっています。フォロワーの乗り鉄にアドバイスを貰いながら描写したキャラにご期待下さい。ポケモン擬人化小説となりますが、原型の鳥ポケモンも結構出番があります。

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