017のネタ帳

ポケモン二次創作ネタとか。

ドーブルと浮世絵師の話

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 江戸の絵師の仕事には、鼠避けの猫(コラッタを追い払うペルシアン)の絵や、疱瘡除けの赤い獣(ガーディやブーバーなど)を描くというものがあり、筆犬(ドーブル)が手伝った絵には命が宿り、より効き目があるとしてありがたがられた。
 が、ドーブルに仕上げをさせた結果、本当に命を得て、描いた絵の馬(ギャロップ)が走り去ったとか、農作物を荒らしたとか、寺の天井画の龍(ギャラドス)が毎夜抜け出して周辺住民がビビるなどがあり、安易にドーブルに頼るのも考えものであるとして戒められてもきた。百鬼夜行なんぞ描かせた日には大惨事である。
 そんな訳で江戸の浮世絵師の間ではドーブルに画業を手伝わせてもいいが、最後の目の瞳の描き入れだけは必ず人間の絵師がやれという教えがあったという。

 ポケモンを描いた傑作にはかつて絵が抜け出して遊んでいたという逸話が付属する例が多い。
 秀でた浮世絵師はドーブルが手違いで人に生まれたなどと言われたもので、葛飾北斎などはその筆頭であった。

 また、ドーブルに関してはこんなエピソードもある。
 浮世絵の一ジャンルとして有名な、いわゆる春画は風紀を乱すものとして幕府の取り締まりの対象であった。故に浮世絵師も別の画号を名乗って描いていたくらいだ。葛飾北斎は鉄棒ぬらぬらというペンネームで春画を描いていた、というのは有名エピソードなのでご存知の方も多いだろう。
 そうしてもう一つの逃げ口が「これは筆犬が勝手に描いたのだ」というものであった。
 ある時、春画を描いたとして浮世絵師が捕まったことがあったが、大岡何某という奉行所のお偉いさんが、「あれを描いたのは筆犬だからしょうがないよネ」という沙汰を出してすぐに家に帰した事があって以来、そのように言うようになったという。