神社で祈願
わが国でトレーナー制度が確立して以降、神社における祈願において、バトルの勝利祈願は大変にメジャーなものとなった。それは自身の勝利祈願であることもあれば、身内や友達の為の祈願である事もある。もはや神社が本来のご利益に加えて、勝利成就を掲げるのは当たり前である。
そして、比例するように増えたものがある。それは「誰かが負けるように」という呪いである。
私が見知っている方法には、神社の絵馬を買い、描かれたポケモンを黒く塗って、呪いのターゲットが負けるように願って奉納するというものだ。そうすると絵馬から抜け出した黒いポケモンがターゲットのところに行って、災いを齎すというのだ。
呪いの絵馬に関しては見つけ次第燃やすと宣言している神社も多いが、一定周期で呪いブームが起こり、神社側も苦慮しているという。
むしろそういった神社側の対策から生き残った絵馬こそ呪いの力が強いと考えられているフシがあって、呪い絵馬の奉納は後を絶たない。
甚だ荒唐無稽な話ではあるが、神社の境内や鎮守の森で黒いポケモンをみかけた、黒いポケモンに襲われた、という報告はSNSなどで後を絶たず、そういった書き込みがさらなる呪いを喚起しているという様相だ。
オカルト好きなトレーナーの間ではゴーストポケモンの一部はこういった行為から生まれているのではないか、などともっぱらの噂である。
このような現象からめざとく商機を感じ取った一部神社はウインディを刺繍したお守りを売り出すなどを始めたようだ。さすが祭神がニャースの神社、商売には敏感である。ガーディやウインディの御朱印も大人気だという。
御朱印といえば、ポケモントレーナーの修行の旅がてら御朱印を集めているトレーナーは多い。
御朱印帳がいっぱいになる度に実家に送っている、と語ったのは昨日話をした女性のトレーナーだった。そろそろ八冊目が埋まるのだと言っていた。バッジは集まらないのに御朱印帳は溜まっていくと実家の親からは嫌味を言われるという。
神社の授与品である焼物や張子のポケモンもかわいいものが多いので、実家を授与品だらけにしてしまうトレーナーもいるようだ。しばらく愛でた後に実家に送るのである。さる家に泊めてもらった時に
「これが手紙の代わりね。どこに行ったかという意味ではわかりやすいわね」
と、家の奥さんが出窓に飾った授与品を指して話してくれたことを思い出す。
もちろん旅に出た子どもの安全、といったものも神社ではよく見られる祈願である。時々、旅はほどほどにして早く帰ってきてくれますように! なんて祈願してしまう親もいるそうだが。
帰ってきて、といえば、年末年始になると帰省するトレーナーは多い。親子で連れ立って初詣に行く、というのは子を待つ親の楽しみの一つであるようだ。